この記事は、
- 図書館はどんな仕事があるのかな?
- 図書館員に必要なものは何?
- どんなメリット・デメリットがある?
こんな疑問が解決する内容になっています。
- 元公務員です。
- 若かりし頃、民間企業で1年半勤めた経験があります。
- 職員採用試験の担当を経験したことがあります。
- 公共図書館の館長職を含めて9年間の勤務経験があります。
- 図書館勤務希望者10人の面接をした経験があります。
- 図書館巡りが好き。関東近郊の図書館を100件ほど見てます。
- 読み聞かせボランティア10年間やっています。
図書館の業務内容
図書館業務は幅広く多岐に渡っているので基本的な専門用語を少しだけ事前に解説しておきますね。
- 資料:本、CD・DVD、紙芝居など、図書館にあるものの総称
- NDC:日本十進分類法といって日本で使われている図書分類法。本の背ラベルの数字の規則のこと。
- 開架:利用者に開かれている書架 ※逆に利用者が入れない書架は閉架
- 排架:本を所定の位置に戻す作業
開架・カウンター内業務
貸出・返却
図書館のメイン業務である貸出と返却をカウンターで行います。
主に資料についているバーコードをなぞって処理します。
館によっては処理したあとに、
- 残りの貸出冊数
- 予約した資料の状況
を伝えることもあります。
中規模館以上であると自動貸出機を設置していある所もあります。
自動貸出機があると、利用者の半数前後はそちらを利用してくれるのでカウンター業務もそんなに煩雑ではありません。
自動貸出機は慣れてしまえば簡単なので年配の方でも問題なく使えます。
ただし、機械が本をうまく読み取ってくれないと???となってしまうケースが多いので、そんな時はサポートしてあげます。
利用カードの発行
初めて利用される方は新規発行、紛失した場合は再発行などがあります。
新規発行は難しくありませんが、再発行は館ごとに細かなルールがあります。
- 申し出から1ヶ月後に再発行する(1ヶ月の間で探してもらう)
- 有償
- 再発行回数の上限がある
予約・リクエストの受付
利用者が求める資料の受付をします。
大体はリクエスト用紙があって、それに書き込んでいただいたものを受付します。
記入漏れがないか、現在の利用状況等を確認してから受理します。
弁償の対応
- 汚してしまった
- 破いてしまった
- 無くしてしまった
こんな場合は弁償していただく必要があるので、その対応をします。
程度によって各館の弁償基準があります。
マニュアルがあっても人によって判断に迷う場合もあるので、上司の方を含めて2人以上で判断しています。
基本的には「次の方が不快にならずに読めるかどうか」が主な判断基準ですかね。
弁償となると、具体的には新品の本を買ってもらいますが、発行していなかったりすると代替の本となります。
原則新品ですが、中にはアマゾンのマーケットプレイスで程度の良い中古本を買って「新品」と言い張る人も💦
中古の本でも良しとする館もありますね。
レファレンス
利用者からの質問・相談を受けて調べものに必要な資料を探すお手伝いをすることです。
京都市立図書館
図書館司書の資格を持っている方でしたら腕の見せ所です。
といっても学生時代に司書資格を取ってたからといって現場レベルでは通用しません。
まず、
- 図書館の業務の流れを理解する
- レファレンスツールを把握する
- 自館にどんな資料があるかを把握する
最低限、この3つを抑えてからレファレンスの経験を積むことで、利用者の期待に応えることができるようになります。
ちなみに、全国の公共図書館の駆け込み寺的なサイトがこちら。
このサイトを見ると、各館の司書さんが利用者からのレファレンスに応えるために参考となる事例がないか、頑張って探している様子をうかがい知ることができます。
図書館経験のない方がこの業務をすることはありませんのでご安心を。
レファレンスを任されるようになったら一人前になったと言えるのではないでしょうか。
排架・書架整頓
利用者から返却された本をもとの位置に戻す作業です。
資料に貼ってある背ラベルの番号順に並べれば大丈夫です。
ちなみに背ラベルの番号は日本十進分類法(NDC)といって、ほぼほぼ全国の図書館で採用されているルールです。※ほぼほぼと書いてあるのは、そうでないところもあります。
ブックカートに乗せて運ぶので力仕事ではありません。
しかし、身長が低い人だと高い位置に戻す場合は肩に負担や、膝に不安がある人は、一番下の場所に戻すときに負担があるかもです。
蔵書点検
蔵書点検とは、一般の企業でいう棚卸しのことです。
資料がが指定の位置に排架されているかどうか、行方不明のものがないかを確認する作業のことをいいます。
館内を休館にして2,3日かけて行うところがほとんでです。
職員全員でバーコードスキャナーを手に取り、一冊ずつ丁寧に読み取って集計する作業です。
事務室内業務
選書
館の規模によってやり方は様々ですが、館長や役職者、現場経験が長い方が集まって選書ツール等をもとに資料選定を行います。
選書ツールについては、図書館流通センターは発行している新刊全点案内を利用しているところが多いです。
『週刊新刊全点案内』(しゅうかんしんかんぜんてんあんない)は図書館流通センター(TRC)が作成する公共図書館向け新刊書情報誌・カタログ。週1回刊行で、1週間に日本で発行された本を紹介する。毎週3500部発行。『週刊新刊全点案内』はTRCと契約した図書館に送付され、書店では販売されない。2008年の群馬県内37の公共図書館を対象としたアンケートによれば、89%が選書業務に『週刊新刊全点案内』を使用していた
wikipedia
選書は図書館に命を吹き込むための「血」であるので、どの館も使命感を持って選書をしています。
選書を効果的に行うためには、
- 自館の利用者・資料の理解する
- 世の中の流れを知る
- 地域を知る
以上の3点が必要です。
自分が選書した本が多く借りられたり、この本があって良かったといった声を聞くとうれしいです。図書館員冥利に尽きます😄
新着本の検品・登録
発注した本を検品して、自館に登録する作業です。
主にパソコンを使って行います。
発行されたばかりの鮮度の高い資料を手に取るので、世の中の流れを把握しやすかったり、自分の興味がある本も把握できるので楽しい作業の一つです。
延滞本の督促
返却期限が過ぎている方には図書館側から連絡します。
以前に比べ今はメール登録されている方には返却日の数日前に通知が来る(館のシステムによる)ので、うっかり忘れている方は少なくなりましたが、それでも一定数の方はいます。
ほとんどの方は
- うっかりしていたよ
- 忘れていてごめんなさい
- 分かりました!
といった返答が返ってきます。
不在の場合は、システムに登録して「いつ、誰が、どの利用者に」督促したか分かるようになっています。
相互貸借資料の手配
図書館協力の一形態で,ある図書館が,同一機関に所属しない図書館からの要求に応じてコレクション中の資料を貸し出したり,その複写物を提供すること。
コトバンク
利用者からのリクエストで自館にない場合、県内の他館から借りてしまうというものです。
この手続きの大変なところは、自館から他館に貸出すときにマイルールがあって館ごとに違う点です。
例えば、
- 新刊本は発行してから3ヶ月経過していないと貸し出さないよ
- 自館から予約が入ったら、あなたの館は後回しになるよ
- 自由に借りていいよ
全部③だったら楽なんですけど、少数なんですよね。
人気のある本はどこも予約でいっぱいなので、数ヶ月待ってもらうか、それとも買ってしまうか。
この制度を使えば、他の本を買うことも出来るので、選書担当者の判断でどちらかに決まります。
本の修理
子どもが破いてしまったり、落書きをしてしまったり、飼い犬が噛んでしまったり💦、いろんなケースがあります。
補修することで次の人も読むに耐えうるのであれば対応します。
糊やフィルム、その他小道具等を使って処理をします。
館内装飾物の作成
素敵な館内装飾は訪れる人の心を和ませ、足を止め、本に手を取る機会を増やします。
こればっかりはセンスが必要です。
保育園や幼稚園の先生の経験があると、この手の装飾は得意な方が多いです。
統計データの作成
来館者数、利用者人数、貸出冊数など基本的なものから、曜日、地区、年齢、時間帯、NDCの細かな項目ごとの統計を前年、前月との比較から見ることで今後の運営の参考にします。
データはシステムから抽出条件をもとに出力しますが、マニュアル通り行えば簡単です。
アンケート調査の集計
定期的に利用者アンケートを行いますので、グラフ化して今後の運営に役立てます。
読書イベントの企画
図書館の来館を呼び込むため、読書をより身近にするために多種多様なイベントを展開します。
講師に講演を依頼したり、自主企画をしたりします。
図書館に泊まる企画もあるようですね。
図書館だけでなく、民間で行われている様々なイベントにアンテナを立てて利用者に喜んでもらえる企画を立てましょう。
情報発信
図書館の新刊案内、イベント、休館情報などを、館内ポスター、チラシ、ホームページ、図書館だより、メール配信、twitterなどの媒体で多岐に渡って図書館の情報を発信します。
今の時代、「積極的に情報を知らしめていないのは行っていないのと同じ」との考えを持つ必要があります。
また、ただ事実を発するだけではなくて、ネーミングやデザインセンス等も問われます。
図書館業務内容のまとめ
館内と事務室内の仕事内容も全く違い、覚えることが多く更に多岐に渡ることをご理解いただけましたでしょうか。
ただし、ここで書かれたことを、いきなり全部覚えるというものではなく、徐々に仕事の覚える範囲を広げて覚えていくといった感じでしょうか。
また、人によって得手不得手があります。
- 館内装飾が得意な人
- データ処理が得意な人
- 企画立案が得意な人
これがすべて得意な人っていないですよね😅
それぞれの得意分野を磨いて図書館に貢献してくれればいいのかなと思います。
そのためには普段から上司の方と自分の得意分野を伝えるなど、コミュニケーションを積極的に取る心がけましょう。
図書館員の休日・休暇・給料
休日・休暇
パート・アルバイトなら扶養の範囲内で働くことも可能です。
フルタイムなら週休2日がベースになります。
図書館は土日・祝日の利用が多いため職員は、土日・祝日は8割ぐらいの人が出勤となります。
ゴールデンウィークも半分は仕事です。
ただし、
- 子どもの誕生日、授業参観日
- 家族旅行
- 久しぶりに会う友人との会食
様々なプライベートな行事も土日・祝日の場合があるかと思います。
そんなときは事前にシフト希望表を提出してもらえれば調整してくれるところがほとんどだと思います。
ただ、いつも土日・祝日を休みに申請するのはご法度です。
土日・祝日は必ず家でゆっくりしたい方はこの仕事は無理だと思って下さい。
土日・祝日がある程度、休みたいと考えている人は休める程度を面接のときに聞いてみるといいかと思われます。
有給も全て消化することが可能なところがほとんどだと思います。
給与
パート・アルバイトならコンビニと同じぐらいと思って下さい。
フルタイムで18万円前後、チーフ、マネージャー、館長など役職付なら月額20~30万前後です。
仕事内容の割には安いと思います。
図書館員に必要なもの
コミュニケーション能力
絶対的な必要条件です。
図書館は大勢の人数が動く組織ですので、いろんな人の多様な考えがあります。
また利用者もいろんな人(いい人、面倒な人)がいます。
コミュニケーション能力が低いと、窓口トラブルが多発するが多々あります。
いくら司書資格があって、専門的な本の知識があったとしても、自我を押し通したり、相手に配慮できない人は不要です。
- 素直で
- 協調性があり
- 笑顔で対応できる
こんな方が求められています。
本が好き
絶対的要件ではありませんが、本好きな方のほうがベターです。
毎日、本と向き合う環境ですので本が好きでないと仕事をしていて楽しくないのではないかと。
魚屋さんが魚のことに興味がなかったり、知識がなかったりしたら仕事になりませんからね😅
パソコンが使える
この場合の「使える」はゆっくりでいいのでブラインドタッチが出来る程度でいいです。
仕事は図書館システムを操作しますが、マニュアルもあったり、重要な処理の場合は必ず確認メッセージが出たりするので、そう簡単にはシステムトラブルにはなりません。
ただ、パソコンの画面は見るのも嫌だというパソコンアレルギーの方は無理です。
図書館に必要なものまとめ
一番大事な必須要件はコミュニケーション能力なのはご理解いただけましたでしょうか。
対利用者だけではなく、実は職員同士が最も重要なのです。
図書館で働く職員は長く働いている人が多く、その人たちはクセがある人である確率が高いです。
そんな立場の人が教育する場合が多いのも事実です。
館長である私も、パートさんの辞め際に
- 私に聞こえるように悪口をみんなの前で言うんです。
- 働きながらなんでこんな苦しい思いをしないといけないんでしょうか
- あなた(私のこと)パートさんに舐められてるわよ。Aさんなんて「館長なんて私が言えば何でも動いてくれるんだから。見ていなさい」って言っていたわよ。
③はさすがに強烈でしたが…💦
どこの職場でも似たようなことはあるかと思いますが、多分に漏れず図書館でもあります。※全部が全部ではないですが💦
ちなみに司書資格は必須要件ではありませんが、指定管理館だと司書の人数が仕様で定められている場合があるため、必須要件のところもあります。
まとめ
何に重きを置くかは人それぞれですが、本に囲まれて仕事をするのは楽しいです。
本が好きなら一度トライしてみてはいかがでしょうか。